日本屈指の酷道|東大阪の暗峠を歩く

酷道とも呼ばれる暗峠

関西一の「酷道」とも称される急坂「暗峠」(くらがりとうげ)。大阪市内から近鉄電車で約30分の枚岡駅、額田駅。その間を延びる古道、暗越奈良街道(くらがりごえならかいどう)は日本屈指の急勾配で、関西のみならず国内でも有名でハイカーも多く訪れています。かつて大阪府と奈良県を結ぶ最短ルートとしてにぎわった古道を歩きます。登ったあとの生駒山グルメもご紹介します。

(ご注意)今回の紹介は徒歩、ハイキングでのレビューです。暗峠へ自動車、バイク、自転車などで行くと車両の損傷、または故障したりする可能性があります。また、転倒、落車によるケガの恐れもありますので、自己責任でお願いします。

暗峠って?

暗越奈良街道はかつて大阪と奈良をつなぐ最短ルートの一つとして人や物の往来に使われてきました。大阪と奈良の県境には生駒山(いこまやま)があり、山を越えていく街道として利用されていたようです。江戸時代に入るとお伊勢参りが盛んになり、旅人も多く、宿や茶屋でにぎわっていたらしいです。

河内名所図会
120年前の観光ガイドブックとも言っていい河内名所図会6巻 暗峠(国立国会図書館より)

ちなみに暗峠の名称は、木が茂って昼でも暗かったことから名付けられたとか、馬の鞍(くら)もひっくり返るくらい急な坂「くらがえり坂」だったからとも言われているようです。

電車など交通機関が発達した現代ではこの道を利用する人は減りましたが、当時の道は国道308号線として利用されています。かつて歩いて登られていた急な道は当時のままで、残された急坂は車の往来の難所としてテレビ番組などでも紹介されています。最近ではYoutubeでも視聴回数トップ10の合計だけでも750万回再生されるほど注目されているスポットとなっています。 (車両で行く動画が多いですが推奨するものではありません。)

ルート
今回紹介するルートです。

登りはじめ

近鉄奈良線枚岡駅(ひらおかえき)または額田駅(ぬかたえき)から線路沿いを徒歩で3分。国道308号線です。ここが大阪の中心から奈良に向かって延びる「くらがり越え」と言われていた街道です。ここから県境の暗峠まで約2.5km高低差400mを約80分で歩きます。

アスファルトではなくコンクリートの路面が酷道の予感。斜面はアスファルトの施工に向かないので、コンクリートで舗装されているとか。ちなみにこの先自販機はありませんのでご注意ください。

(自動車の方は現地の標識に従って北方向[写真左手]からの迂回路を通る必要があります)

国道308号線
コンクリートに輪っかの溝は急坂あるある。

ここだけでもヘトヘト

先ほどの線路側から数分歩くと、この辺りは大阪府営公園の一つ枚岡公園(ひらおかこうえん)です。その中のスポットの一つが豊浦橋(とようらばし)。青紅葉に赤い橋が印象的です。秋は紅葉が美しい東大阪でも有名な紅葉スポットです。橋を渡って遊歩道を降りると川のそばに降りることでできます。

スタート地点からここまで来るだけでかなりの傾斜で、この先どうしようか悩んでしまいます。(無事に登り切れるでしょうか…。)足に自信がない人はこのあたりで「暗峠奈良街道」を体験したということで引き返しましょう。

余談ですが、枚岡公園は生駒山の自然を楽しめる公園として人気です。園内の散策道を歩くだけでもハイキング気分が楽しめます。公園内の枚岡山展望台は筆者オススメのスポットです。

豊浦橋
新緑に赤が映える豊浦橋

歩くとどんな感じ?

この道はずっと傾斜で、ひたすら暗峠に向かって登り続けます道幅が狭いので往来する車やバイク、サイクリストに要注意です。道中、観音寺というお寺や所々に石の道しるべ、石仏群があり昔の古道を思わせます。
頻繁に利用されていた時代はどんな光景だったのでしょうか…。当時はコンクリートの舗装もされていなかったことを想像すると、相当大変だったような気がします…。
山手から流れる川の音をききながら進みます。この道には現在気温を知らせる電光掲示板があります。大雨や冬場の路面凍結時にはとても危険な様子です…。取材時期は6月ですが、朝に雨が降っていたので路面は濡れていて足元はスリップ注意です。(コンクリートの路面には水抜きの溝があるので二輪車、自転車は本当にお気をつけください。)

路面
自転車はこの溝でタイヤを痛めるので注意

暗峠最大傾斜

線路から登り始めて約40分。ここが全国に酷道と呼ばれる所以となったスポットです。小川を2回またぐように作られたこの急カーブと、この高低差をなんとか車で登り切るために限界まで計算された(と思われる)傾斜角。その最大勾配は約40%とも言われています。

古道の暗越奈良街道の難所に、なんとか車道を通すためにこのカーブをつくったのかもしれません(筆者の想像です。)

しばらくこの場所眺めていると、他県ナンバーも目立ちました。登りの自動車が残す白煙とタイヤが焼けた匂い。ブレーキの金属が擦れた匂いを残して下る車が印象的です。運転している人も緊張するはず。酷道と呼ばれる意味がわかりました。

地元の車や配達車はさすがのライン取り。白煙なしで難なく走り抜けます。
焼けてへばりついたタイヤ痕がこの険しさを物語る。
急傾斜とカーブが合わさった様子は東大阪に現れたメビウスの輪のよう。(パノラマ写真)
この急坂を日々通う配達員さん、尊敬です。

その先に里山の風景

最大傾斜ポイントを超えると目的地の暗峠に向かってひたすら登ります。道中、右手に「弘法の水」と呼ばれる湧き水が出ている場所があります。ここには市の文化財の石碑「笠塔婆」(かさとうば)があり、鎌倉中期の1284年に建てられたものだそう!700年以上もの昔も湧き出ていて、当時の休憩所として旅人の口を潤していたのでしょうか。(現在この水は飲めません)
県境に向かってさらに進むと里山の田園風景が広がります。

何百年も昔から親しまれていたのでしょう
湧き出る弘法の水。葉っぱの上のカエルくんに癒される。
棚田風景っていいですよね。

石畳みは当時の名残り

県境に差し掛かると足元が石畳にかわります。昔は足元がぬかるんでいたため、参勤交代の際に歩きやすくするために江戸時代に石畳を敷いたのだとか。お伊勢参りにもよく使われていた道。当時から同じ石畳なのでしょうか…?この石、何百年も昔の人が踏んでいた石畳だとしたらロマンを感じますね。(敷きなおしているかもしれませんが)

石畳は当時と変わらないものなのでしょうか。昔の写真と比較してみたい。

ちょうど大阪府と奈良県の県境には目印になる石碑があります。ここがフォトスポット。暗峠を訪れた思い出に写真に収めておきたいですね。

#暗峠 で人気のフォトはここで

暗峠に着いたあとは大阪府側の近鉄枚岡駅額田駅に引き返すか、奈良県側の近鉄南生駒駅生駒駅に向かいます。

暗峠から生駒グルメスポット

暗峠には「峠茶屋すえひろ」のような当時の茶屋を思わせるスポットのほか、奈良県生駒市に入ると「ラッキーガーデン」や「友遊由」など生駒山グルメがとても人気です。

暗峠周辺のグルメ情報をグーグルマップでチェック

生駒山の自然を生かした眺望の良いレストランが多いのもこの辺りのおすすめポイントです。古民家を改装した雰囲気もかなりの異世界感。そこではエスニック料理など多国籍料理が楽しめます。プレートにのったカラフルな料理と生駒山でしか味わえない贅沢な時間を味わえます。

ラッキーガーデンは生駒山を代表するグルメといってもいい人気店

友遊由は生駒の田園風景を眺めながらランチやカフェが楽しめるスポット

まとめ

日本屈指の「酷道」とも言われる暗越奈良街道・暗峠。
傾斜が注目されますが、かつてはお伊勢参りで賑わった名残もあり、歴史の深さがうかがえます。
話題スポット好き、古道好きの皆さんは一度訪れてはいかがでしょうか。

道ばたに咲く可愛い花。里山の風景によく似合う。

ご注意

・雨天、雨の後の路面はとても滑りやすいので注意してください。
・車の往来の妨げにならないように注意してください。
・枚岡駅・額田駅以降、飲料を買えるところが無いので駅前であらかじめ買っておきましょう。
・民家の横を通る場所もありますので静かに歩きましょう。

アクセス

近鉄奈良線枚岡駅(ひらおかえき)から最大傾斜スポットまで徒歩約40分。そこから暗峠県境まで徒歩約40分。

リンク

生駒山ハイキング(ピカひがサイト)

生駒市観光協会(サイトへリンク)

レポート:東大阪観光協会